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説得―エホバの証人と輸血拒否事件

著者:
出版社:現代書館
定価:¥ 2,100
頁数:
発売日:1988-11
評価:5.0 / 5.0
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信仰と生命。この重たいテーマに20代(当時)の若者が体当たりで挑んだ傑作ルポ

昭和60年6月一人の少年が交通事故に遭った。輸血をして手術を行えば助かったであろう命が、両親が宗教(エホバの証人)上の理由で輸血を拒否したことによって失われた。更に少年は苦しい息の下で「生きたい」と訴えていたことも明らかになったため両親は大変なバッシングを受けた。

10歳の頃には信者を目指していたという過去を持つ著者は、自身も信者だった少年の「生きたい」という言葉の本当の意味を知りたいという思いから教団に『潜入』、彼らと行動を共にする。その中で活動する両親から事故の話を聞くのが最終的な目的だが、それは最後の段階まで隠されたままである。

『潜入』できたということだけでも著者の真摯な気持ちが窺える。そうでなければ教義の全てを信じていないことを信者達から見抜かれている著者が、当時警戒的だった信者達に受け入れられるはずがないからだ。

信者達の等身大の姿、信仰心を中心に描いた序盤から中盤、医師達等のインタビューを基に病院でのやり取りを再現した終盤の「説得」を読むに至って、簡単にその是非を論じてはいけないのではという気になってしまった。

しかし、信者達がエイズについて雑談している様子を『皆ニコニコしている。輸血によって感染したり、同性愛が原因になったりするため、彼らはこの病気を、神からの警告とみていた。エホバの証人は、エイズの流行を世界で一番喜んでいる人達だ(第5章)』と著者が記しているのを思い出すと、無神論者である私は、結局、宗教ってそんなもんだよなと思い、両親の決断はやっぱり納得できないという結論に至ってしまう。

何故なんだ!知りたい!という若者(当時20代)の情熱が生み出した傑作ルポ。

誰もが立ち位置を問われる問題

これが初のノンフィクション作品というから、著者の力量には並々ならぬものを感じる。
北野武主演のドラマで広く認知されたこの「エホバの証人事件」であるが、私自身もドラマの影響で本を手に取った一人である。
少年は、死んでしまった。すぐ目の前で、刻々と血液を失い続け、何の手も打てなかった現場の医師たち。「輸血をしないで命を助けてください」と念仏のように唱える両親。地獄絵図である。著者はまるで現場中継をするかのように、その地獄を再現してみせた。
この事件はいくつもの問題を提起する。いわく「宗教はどこまで尊重されるべきか」「未成年の子供の生命は親の所有物か」「輸血には承諾が必要なのか」「輸血は臓器移植とどう違うのか」「少年の死の責任は、誰に、どのような順で課せられるべきか」…このように、「エホバの証人事件」とは一筋縄ではいかない、複雑なものである。この題材に取り組んだ著者の炯眼には感心する。
私見を述べる。
私は、子供の生命は親の所有物ではない、と考える。特に近代国家においては、それでいいと思う。輸血に承諾が必要なのは、感染症などの可能性を否定できないからである。だが、一刻を争う場合には、承諾を得られなくてもよい、と考える。命にかかわる臓器移植には反対であるが、輸血が臓器移植と同じ意味をもつ、とは思わない。よって、輸血によって一時的に命を繋ぐことについては、否定しない。宗教は、生命の危険よりも尊重されるべきか、というのは、机の上で考えるべきではないのである。現場の医師にこそ、決定権を与えるべきである。
そして、最も責任が重いのは、院長だと考える。なまじハンパな宗教知識があるばっかりに優柔不断に流れ、よもや訴訟を恐れたのであれば、廃業していただきたい。それでも許されるとは思えぬ。
院長よ、もしも少年が目の前に現れて、「なぜ僕を両親の手から救い出してくれなかったのか」と責めたら、なんと言い訳するのですか。

考えさせられる内容

この事件については殆ど知らなかったのですが、何となく購入して読んで見ました。

宗教とは近い様で非常に遠い国、日本。
宗教、信仰、そういった事を考える機会は普段殆どありません。
信仰心の為に助かるべき命を救わない。それは許されない事なのか?
その答えは万人にとってイエスという訳ではない。
人それぞれの価値観、倫理観があり。それをどこまで認めるべきなのか?
そういったことを考えさせられました。

人生観・価値観・倫理観

ずいぶん以前に話題になった時に読みました。(そのときには北野武さん主演でドラマにもなりましたが、かなり原作から逸脱した誇張・演出があったように感じました)この本を「医療上の選択の問題」と捉える向きもあるようですが、それには少し無理があるように感じます。これはむしろ、人間の価値観や倫理観の問題ではないでしょうか。

例えばこういうことです。太平洋戦争の最中にわたしたちが生きていると考えます。そのときわたし達の元に「徴兵」の命令が届くとします。あなたならこの命令に従いますか、それとも拒否しますか?

社会情勢などから見て、この命令に逆らえば弾圧や拷問、もしかすると殺される可能性すらあります。(戦時中の反戦主義者や共産主義者への弾圧については良くご存知でしょう)みなさんの中の何人かは、「例え殺されても戦争には参加しない」というでしょう。あるいは不本意ながら「非国民として家族を巻き込んで弾圧されるくらいなら、応じる」というひと、さらには「喜んで国家に忠誠を示す」という人もいるでしょう。

これらの選択肢のどれを選ぶか。それはあなたの国家観・人生観・価値観・倫理観の問題であって、本来誰にも強要されるべきものではありません。例え結果として国家に背く結果になり、そのために「獄死」したとして、あなたはこの人の選択を責められるでしょうか?また、この人は「自殺志願者」ではありません。恐らく、徴兵の代わりに何らかの強制労働や、罰金が科せられて免除されるとしたら、それについては受け入れる可能性があるからです。つまり「戦争という行為には加担しないが、代替措置としての労役や科料には従う余地がある」ということです。

この本に出てくる家族も、数ある治療法の中で「輸血」という手段だけを「倫理上」受け入れられなかっただけのことで、そのほかの代替手段を医療機関側が提示していれば、恐らく喜んで受け入れたのでしょう。

この本を通じて感じたのは、彼らが驚くほどに普通の正直な人々の集まりで、わたしたちと何ら変わりのない人々だということです。また、彼らのような少数意見を持つ人々の倫理観や価値観を認めることは、必ずしもわたし達の社会にとって不利益ではないということも感じました。少なくともこのルポからみるエホバの証人は「危険なカルト・狂信者」ではなく、ごく普通の感情と良心を持つ至って理性的な人々であると感じました。

個人の選択とは何でしょうか

ã"の本のテーマのひとつは、個人の自ç"±ã¨ã¯ä½•かだと思います。ã"の本にå-り上ã'られている事件は、もう15å¹'も前にあった交通事æ•...と、それに続く一連の事件のã"とです。一人のå°'å¹'が事æ•...に遭い、家æ-ã¯å®-教的良心により、医è€...らの「説å¾-」ã‚'退ã'てå°'å¹'への輸血ã‚'æ‹'否ã-た。å°'å¹'は死に、家æ-ã¯ãã®æ±ºæ-­ã‚'祝福された。個人の、あるいは親のå®-教的自ç"±ã«ã‚ˆã‚Šã€å°'å¹'は死ã‚"だのです。後に残ったのは、å°'å¹'ã‚'æ•'えなかった医è€...と、本来の治療ができ、å°'å¹'がç"Ÿãã¦ã„れば、業務上過失è‡'傷であったはずの運転手の業務上過失“è‡'死”の罪名、そã-てå°'å¹'の死。

ã"れは、エホバの証人の人ã€...のみについて言えるã"とでも、å®-教的選択についていえるã"とでもなく、そã-てæ˜"あったã"とでもないと思います。個人の選択とはã!©ã!"まで許されるのでã-ょうか。ç"Ÿå'½ã®æ"¾æ£„まで許ã-ていいのでã-ょうか。その選択の尊重は、どã"まで要求されるのでã-ょうか。ç"Ÿå'½ã®æ"¾æ£„ã‚'も尊重ã-、æ"è­·ã-なくてはいã'ないのでã-ょうか。その選択は、誰がすべきでã-ょうか。子供の代わりに親がã-ていいのでã-ょうか。
もちろã‚"å®-教的決æ-­ã¯å°Šé‡ã•れなくてはならないã-、証人の人ã€...は信仰ã‚'持ち、その信仰から輸血æ‹'否ã‚'ã-ただã'で、ã'っã-て反社会的意思はないのです。ただ、その限界が問われているのです。

二å¹'前、最高裁判所は、輸血æ‹'否患è€...に対ã-てインフォームドコンセントã‚'怠ったとã-てç-...院の賠償義務ã‚'認めまã-た。“説å¾-“に応じない患è€...ã‚'どうã-ろというã"とは、å½"然いいませã‚"。ã-かã-、ã"れは事実上æ"¾ç½®ã›ã-るã‚'å¾-ないとã-たも同然と、私にはæ€!ã!...

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